廃業届の出し方|個人事業主が事業をやめるときの届出について
個人事業主が事業を終了させる際には、いくつかの重要な手続きが必要となります。例えば「廃業届」の提出です。税務上の義務であるこの廃業届の提出を怠ると、税務上の不利益を被る可能性があります。
本記事では、廃業届の概要、作成方法、関連書類、そして精算手続きに至るまで詳しく解説していきます。個人事業主の方々が、廃業時に円滑に手続きを進めるための参考となれば幸いです。
事業をやめるときは廃業届を提出する
事業を終了する際には、廃業届(正式名称:「個人事業の開業・廃業等届出書」)の提出が必須です。
この廃業届は事業開始時に提出する「開業届」と同じ様式で作成するもので、納税地を管轄する税務署へ提出します。
この届出を行うことで、個人事業主が事業を終了したこと、及びその事業終了の時期が国や自治体に正式に記録されることになります。廃業届の提出を怠ると、事業が依然として継続していると見なされる可能性があります。
法人による廃業との違い
個人事業主と法人とでは、廃業手続きに大きな違いがあります。
法人の廃業は複雑で、解散や清算、場合によっては特別清算などの複数のプロセスが必要です。債権者への公告期間が設けられ、法人税の申告や各種登記など、多くの法的要件を満たす必要があるため、時間と手間がかかります。
一方、個人事業主の廃業手続きは比較的シンプルです。主に税務署への廃業届の提出と、必要に応じてその他の関連書類を提出することで完了します。
個人事業主が亡くなった場合
個人事業主が亡くなったことにより廃業となる場合、相続人が廃業手続きを行う必要があります。
この場合に必要な書類は、「個人事業主の死亡届出書」と「廃業届」です。これらを相続人が作成し、管轄の税務署に提出します。
- 個人事業主の死亡届出書:「速やか」に提出
- 廃業届:「1ヶ月以内」に提出
さらに、相続人が事業を継承する場合でも、新たに開業届を提出することが必要です。この開業届の提出期限は、事業主の死亡日から「1ヶ月以内」とされています。
廃業届の作成方法と提出方法
廃業届の作成を開始するにあたり、まず国税庁の公式Webサイトから必要なフォームをダウンロードします。続いて、下記の必要箇所に正確に記入していきます。
記入欄 | 補足 |
税務署名 | 毎年確定申告を行っている税務署の名称を記入 |
提出年月日 | 廃業届を郵送する日付、あるいは直接税務署に持参する日付を記入 |
納税地 | 一般的には住所地を記入するが、事業所が別の場所にある場合はその住所も併せて記入 |
氏名・生年月日 | 事業主の氏名と生年月日を記入 |
個人番号 | 12桁の個人番号(マイナンバー)を記入 |
職業・屋号 | 具体的な職業名と、屋号(存在する場合)を記入 |
届出区分 | 「廃業」を選択し、廃業の具体的な理由を記入 |
所得の種類 | 該当する所得の種類を選び、廃業する事業の種類を記述 |
開業・廃業等日 | 具体的な廃業日を記載 |
関連届出書の提出 | 必要な書類を提出する場合は、該当箇所にチェック |
給与支払いの状況 | 従業員や事業専従者に対する給与の支払い状況がある場合はその詳細を記入 |
なお、法人設立に伴う廃業の場合は、新設法人の名称・法人代表者名・法人納税地・法人設立の登記日を記入します。
廃業届の提出方法
廃業届の提出には以下の方法があります
- 直接税務署に持参:平日の受付時間内に税務署に持って行く。時間外収受箱の利用も可能だが、書類の不備に注意。
- 郵送:廃業届と必要書類を所轄の税務署に送付する。追跡サービス付きの郵便を利用することが推奨される。
- e-Taxでの提出:国税電子申告・納税システム(e-Tax)を使用して、インターネット経由で提出する。この場合、マイナンバーカードとカードリーダーが必要。
提出時には本人確認が必要となるため、マイナンバーカードや身分証明書を持参するか、コピーを同封することが重要です。郵送で提出する場合は、返信用封筒を同封して控えを受け取ることができます。
廃業届以外の届出書類
個人事業主が廃業する際、廃業届の提出に加えて、以下の届出書類も提出しなければならない場合があります。
届出書類の種類 | 概要 | 提出期限 | 提出先 |
青色申告の取りやめ届出書 | 青色申告を行っていた場合に必要。通常は廃業届と同時に提出する。 | 廃業する年の翌年3月15日まで | 税務署 |
消費税の事業廃止届出書 | 消費税の課税事業者が廃業する際に提出する。 | 廃業後すみやかに | 税務署 |
給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出書 | 給与の支払いがある場合に必要。源泉徴収に関連。 | 廃業の日から1か月以内 | 税務署 |
所得税及び復興特別所得税の予定納税額の減額申請書 | 予定納税をしていた場合、過剰な予定納税額の減額申請に使用する。 | 第1期分及び第2期分:7月1日~7月15日、第2期分のみ:11月1日~11月15日 | 税務署 |
個人事業税の事業廃止届出書 | 個人事業税に関する手続き。廃業時に必要。 | 廃業の日から10日以内 | 都道府県税事務所 |
廃業届を出した後の精算について
廃業届の提出後は、個人事業主としての最終的な精算手続きが必要になります。
主に、確定申告と残った借入金の処理があります。廃業に伴う精算は、事業の終了だけでなく、税務上の責任を適切に処理するためにも重要です。
これらの手続きを正確に行うことで、個人事業主としての義務を完了させることができるのです。
廃業後の確定申告はどうなる?
廃業した事業主は、廃業した年に関しても確定申告を行う必要があります。
この申告は、1月1日~廃業日までの所得に関するものです。
廃業年の所得が20万円以下の場合、基本的に確定申告は不要です。青色申告者については、青色申告の特別控除を受けるのであれば確定申告が必要となります。
残った借入金はどうなる?
廃業時に借入金が残っている場合、これは個人の借金として扱われます。
可能であれば、事業資産の売却などを通じて返済することが一般的です。ただし、借入金の完済が事業資産や個人資産のみで困難な場合、債務整理も検討することになるでしょう。
廃業届の提出は、事業の一つの節目であり、責任ある終わりを迎えるための法的な手続きです。廃業手続きを適切に行い、税務上の問題をクリアにした上で新たなステップを踏み出すようにしましょう。