個人事業主に対する税務調査の時期はいつ?何月?タイミングを考察

個人事業主にとって税務調査はとても不安な要素であり、「税務調査はいつやってくるのだろう」と考える方も多いのではないでしょうか。

実際のところ、税務調査が行われる時期などは公表されていないため、明確な時期を特定することは困難です。とはいえ、税務調査が行われやすい時期の傾向などは存在するとされています。

そこで本記事では、税務署の業務状況や過去の調査例などから税務調査が行われやすい時期やタイミングについて考察していきます。本記事を通じて税務調査への不安を軽減していただければ幸いです。

税務調査の時期は決まっていない

税務調査の具体的な時期やルールについては公表されていません。個人事業主であろうと企業であろうと、税務署がいつ・誰に対して調査を行うかを知ることはできないのです。

しかし、国税局や税務署にも多忙期や人事異動の時期が存在します。そのため、税務調査が行われにくい時期や傾向を推測することは可能です。

ただ、それはあくまで推測に過ぎずません。1年を通していつでも税務調査が行われる可能性があることは認識しておく必要があります。

時期別の税務調査の入りやすさについて

具体的に税務調査の時期について考察していきます。

国税局や税務署の人員にも限りがあるため、1年を通して均等に調査を行うことは難しいと考えられます。一般的な企業等と同様に、多忙期や人事異動の時期に人手が足りなくなると考えられるからです。

その観点から、時期別に税務調査の入りやすさを考察していきます。

確定申告の影響を受ける時期

1月から3月は個人の確定申告の時期で、税務署が多忙となる時期です。

個人事業主からの相談件数も急増し、その対応も含めた確定申告の業務に追われるでしょう。そういった期間に、税務調査は入りにくいと考えられます。

法人税申告の影響を受ける時期

法人税の申告は、決算後2ヶ月以内に行う必要があります。日本の企業の大半が3月を決算期としているため、法人税の申告は4月から5月にかけて行われることが一般的です。特に5月には申告が集中するため、税務署の職員も忙しくなると考えられます。

以上の理由から、4月から5月にかけても税務調査を避ける傾向にあると言われています。

税務署の人事異動がある時期

税務署では、毎年7月頃に人事異動が行われます。人事異動の対象となった税務署の職員は、異動に伴う業務の引継ぎや身辺整理が必要です。そのため、6月に税務調査が行われるとしても、短期間で完了する小規模な個人事業主などが対象になりやすいと言われています。

そして7月からは、人事異動によって編成された新体制で税務調査が本格的に開始されると考えられます。移動先の新しい環境で、やる気に満ち溢れている調査官も少なくないでしょう。

税務調査が来やすいと考えられる時期

上記のように、1月〜3月は個人の確定申告、4月〜5月は法人税の申告、そして6月は人事異動のための業務引継ぎ等が行われることから、税務調査は7月から12月にかけて行われやすいと考えられます。

7月からは税務調査の準備段階として、対象となる個人や企業の書類審査が開始される傾向にあるといわれており、その審査結果によって現地調査の必要性や対象者が定められていきます。

そこで、実際の現地調査が行われるのは9月~12月が多いようです。この時期には、税務署の職員が直接現場に赴き、帳簿や証拠資料の精査を行います。このような理由から、「税務調査は秋が多い」と言われています。

しかし、これはあくまで予測される傾向ですので、他の時期に全く調査がないわけではありません。申告内容や業務内容に矛盾や不正が疑われる場合には、どのような時期であれ調査が行われると考えておかなければなりません。

個人事業主には何年に一度税務調査がくるのか

個人事業主について「どれくらいの頻度で税務調査が行われるか」を一概に言い切ることはできませんが、一般的には5~10年に一度のペースで行われるとされています。

業種や売上高、過去の調査結果など、多岐にわたる要素が影響するため、一概には言えないのです。特定の業種、例えば現金取引が多いバーや飲食店などは調査が行われやすいとされ、売上の急激な変動や過去の過少申告なども調査の頻度に影響を及ぼします。

一方、法人に対する税務調査は、個人事業主に比べて高い頻度で行われる傾向にあり、通常は3~10年に一度のペースで行われることが多いと言われています。

なお、個人事業主と同様に、急激に売上が伸びた場合や不正が疑われる業種に加えて、売上が100億円以上の大企業等に対しては、さらに高い頻度で税務調査が行われる傾向にあるようです。

税務調査の連絡から調査期日までの期間

税務調査が行われる際には、原則、国税通則法第74条の9に基づいて、税務署から電話や文書によって対象者に事前通知が行われます。通知の時期は厳密に決まっているわけではありませんが、調査の1~2週間前には連絡が来ることが多いようです。

この段階では、調査担当者や調査の目的や理由・調査の対象となる帳簿などの具体的な情報が伝えられます。また、顧問税理士がいて、税務代理権限証書を税務署に提出している場合には税理士へ連絡がいくため、税理士が代理人として様々な調整を行ってくれます。事前通知が来ることにより、納税者や税理士は調査に必要な準備を開始することが可能です。

事前通知を受けてから、税務署の担当者と調査の日程調整を行います。納税者の仕事や家庭の都合に合わせて日程を希望することが可能で、税理士とも相談しながら調整を進めることが一般的です。

事前通知から調査の当日までの期間は、税務調査に必要な書類や資料の準備・内容の確認・回答のシミュレーションなど、詳細な準備ができる貴重な期間です。焦らずに入念な準備を行いましょう。税務調査は丸一日または数日かけて行われることが多いため、この時期の調整と準備が調査の円滑な進行につながります。

抜き打ちで税務調査にやってくることもある

前述したように、税務調査が行われる場合には、事前に通知されることが原則です。しかし、通知がされることなく抜き打ちで税務調査が行われる場合があります。これを無通知調査と呼びますが、どのようなケースで無通知調査が行われるのかを解説します。

まず、条文を確認してみましょう。

(事前通知を要しない場合)

第七十四条の十 前条第一項の規定にかかわらず、税務署長等が調査の相手方である同条第三項第一号に掲げる納税義務者の申告若しくは過去の調査結果の内容又はその営む事業内容に関する情報その他国税庁等若しくは税関が保有する情報に鑑み、違法又は不当な行為を容易にし、正確な課税標準等又は税額等の把握を困難にするおそれその他国税に関する調査の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあると認める場合には、同条第一項の規定による通知を要しない。

分かりやすく説明すると、「納税者のこれまでの申告状況や過去の税務調査の結果、事業内容に関する情報を総合的に分析し、違法行為や不正行為が疑われる場合や、事前通知をすることによって調査に支障をきたす場合」に、事前通知なしで調査を行うことができるということです。

具体的には、事前通知をすることによって証拠の隠滅や改ざんを行うおそれがある場合や、過去の不正行為の発見を困難にするような行為が行われると推認された場合には、無通知調査が行われる可能性があります。

個人事業主にも正しい税務処理が必要

税務署は確定申告の時期や法人税の申告時期、さらに6月の人事異動の時期には多忙となるため、7月から12月にかけて税務調査が行われやすいと考えられます。

しかし、重要なのは税務調査がいつ入るかを予測してその時だけ対策を考えるのではなく、「日々の業務において正しい税務処理を怠らない」ことです。

税務調査は過去の分も遡ってチェックされますので、日頃から正しい税務処理を行うように心がけておかなければなりません。それが将来的に税務調査が入った際にも冷静に対処するための基盤となるでしょう。

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