法人成りにかかる費用|手数料などの金額を具体的に紹介

個人事業主から法人への移行、いわゆる「法人成り」をするか悩んでいる個人事業主の方もいるのではないでしょうか。

法人成りにあたっては費用が必要となりますので、本記事で「どの手続きで費用が発生するのか」「負担が必要な金額はいくらか」について押さえていただければと思います。

個人事業主が法人成りする流れ

法人成りするには少なくとも次の手続きを進める必要があり、その手続きに応じた費用がかかります。大きく次の3ステップに分けられます。

  1. 定款を作成する(株式会社の場合は認証も必要)
  2. 出資金の払い込み
  3. 法務局で登記申請をする

法人成りするのに必要な費用

法人成りには、いくつかの段階で費用が発生します。以下に、法人成りするために必要な手続きと費用を紹介します。

定款の作成にかかる費用

定款とは、会社の基本的なルールや規定を記載した文書です。法人成りの際には必ず必要になるもので、さらに株式会社の場合、作成した定款は公証役場で公証人の認証を受ける必要があります。

そして認証手続きには、定款の原本、発起人全員の印鑑登録証明書、実印、認証手数料などが必要です

  • 認証手数料: 資本金額に応じて30,000円から50,000円
  • 謄本代: 約2,000円が目安
  • 収入印紙代: 40,000円
  • 印鑑登録証明書: 300円~

これらを合計すると、定款の作成には約72,300円から92,300円程度が必要です。

ただし、電子定款を利用する場合は収入印紙代が不要になるため、費用を抑えることが可能です。

出資の履行にかかる費用

基本的に出資の履行に直接的な費用は発生しませんが、金融機関に出資金払込事務取扱の委託をする場合には、委託手数料として、出資金総額の0.25%前後程度が必要となります。出資金の金額は、2006年の会社法改正以降、理論上は1円から可能となりましたが、資本金の額は会社の信用度や将来の資金調達に影響を与えるため、慎重に決定する必要があります。

設立登記にかかる費用

資本金の払い込み後、法務局で会社設立の登記申請を行います。必要書類には、登記申請書、登録免許税納付用台紙、定款、発起人の決定書、印鑑証明書などが必要です。

設立登記には以下の費用が発生します。

  • 登録免許税: 資本金の0.7%

※最低課税金額として、株式会社は15万円、合同会社は6万円が必要です。

  • 会社実印費用: 約20,000円~

たとえば、資本金が300万円の株式会社を設立する場合、資本金の0.7%は21,000円ですが、最低課税金額として15万円の登録免許税が必要となります。

専門家への依頼にかかる費用

法人成りの際には、税理士や司法書士、行政書士などの専門家のサポートがあれば安心です。しかし、専門家に依頼するにも費用がかかります。

  • 税理士:
    税務に関するサポートをしてくれる。法人成りによる節税効果、会社設立後の記帳代行なども依頼できる。費用は事業規模・売上規模や依頼内容によって大きく異なり、数万円から数十万円かかることもある。
  • 司法書士:
    定款の認証、設立登記などを代理で対応してくれる。設立登記手続きに関する依頼費用は、5万円〜15万円程度が相場。
  • 行政書士:
    各種許認可申請や法人設立に伴う書類の作成をしてくれる。定款作成なら5万ほど、許認可申請であれば数万円から20万ほどが相場。

会社設立後にかかる費用

会社設立後には、個人事業主には発生しない費用がかかります。事業の規模や業種によって異なりますが、一般的に考慮すべき費用は以下の通りです。

社会保険料:必ず加入しなければなりません。従業員と会社が折半して支払いますが、従業員に支払う給料の15%程度を会社が納付することになります。

税金:利益に応じて法人税、法人住民税が発生しますが、法人住民税は赤字であっても資本金の額に応じて支払いが必要です。

  • 資本金1千万円以下:7万円~
  • 資本金1千万円超:18万円~

決算公告費用(株式会社):株式会社は決算公告を行う義務があり、公告方法によっては費用がかかる場合があります。

  • 全国紙に掲載:10万円~100万円
  • 官報:6万円程度
  • 電子広告:無料

必要書類の準備にかかる費用

会社を設立する際には、印鑑や印鑑証明書を準備しておく必要があります。

印鑑:約5000円~数万円

印鑑証明書:約300円✕必要枚数

法人成りした後の費用も比較しながら検討しよう

法人成りにはメリットもありますが、事業の性質や所得の大きさによっては個人事業の形態を維持した方が良いケースもあります。

法人成りにするにも費用がかかりますし、税金の負担が増してしまうこともあるのです。そのため事業のスケールや今後の展望を踏まえ、慎重に比較検討することが求められます。