ネットショップの運営で守るべき法律!個人事業主も特商法や景品表示法に注意
インターネットの普及により、ネットショップを開設しやすい時代となりました。しかし、この手軽さの裏にはネットショップ運営者が直面する様々な法律上の課題が存在します。
本記事で、ネットショップを運営する上で守るべき法律について解説していきますので、ネットショップ運営の参考にしてください。
ネットショップの運営に関わる法律
「ネットショップ」とは、インターネットを介して商品やサービスを販売するオンラインストアのことを指します。
※「ECサイト」「ショッピングサイト」「通販サイト」などの名称で表記されることもある。
ネットショップを運営する魅力は、実店舗を持たずに、インターネット上で商品やサービスを提供することが可能であることです。そんな便利なネットショップですが、運営するに当たって知っておくべき法律があります(下表)。
法律 | 概要 | ネットショップ運営への影響 |
特定商取引法 | 消費者を不当な勧誘から守り、透明性の高い取引を促進する法律。 | 事業者の名称や連絡先、商品の価格や送料、返品条件などの重要情報を明確に表示する必要がある。 |
景品表示法 | 誤解を招くような広告を禁止する法律。 | 誇大広告を避け、商品やサービスに関する正確かつ適切な情報提供を行う必要がある。 |
電子契約法 | インターネット上での契約締結プロセスに関する法律。 | オンラインでの商品購入に際して、契約条件を明確にし、適切な情報提供と同意取得のプロセスを確立する必要がある。 |
個人情報保護法 | 個人情報の取り扱いに関する法律。 | 顧客から収集した個人情報を適切に管理し、無断での第三者への提供や不正利用を防ぐための措置を講じる必要がある。 |
ネットショップでも許認可は必要
ネットショップ運営には、実店舗と同様に、特定商品の取り扱いによって許認可が必要な場合があります。
例えば、中古品販売には「古物営業法」に基づく許可、食品販売には「食品衛生法」に基づく営業許可と食品衛生責任者の設置が必要です。また、酒類の販売には「酒税法」に基づく酒類販売業免許が求められます。
これらの許認可を得ずに営業した場合、実店舗でもネットショップでも変わらず罰金や懲役といった罰則が課される可能性があります。事業を開始する前には必要な許認可を確認し、申請を忘れないようにしましょう。
特定商取引法について
特定商取引法(特商法)は、消費者と事業者の間で発生しやすいトラブルを未然に防ぐために制定された法律です。
ネットショップの運営も特定商取引法の対象となる「通信販売」に該当するため、同法による規制を受けます。
特定商取引法に基づく表記
特定商取引法では、消費者が安心して商品やサービスを購入できるよう、事業者が提供すべき情報を定めています。以下の情報をまとめ、「特定商取引法に基づく表記」といった表題で専用のページを作ることも多いです。
1)事業者の氏名(名称)、住所、電話番号
個人事業主の場合は、屋号などではなく個人の氏名が必要です。
2)販売価格、送料:
全ての費用が含まれた最終価格を明確に表示します。
記載例:
- 販売価格:各商品ページに表示
- 送料:全国一律500円(税込)、20,000円以上の購入で送料無料
3)代金の支払い方法
クレジットカード、銀行振込、代金引換など、消費者が選択できるオプションを明確にします。
4)支払い時期、商品の引渡時期
記載例:
- 支払い時期:クレジットカードの場合は注文確定時、銀行振込の場合は注文後5日以内
- 商品の引渡時期:入金確認後、3営業日以内に発送
5)返品特約・瑕疵担保責任
返品に関する条件や、商品に欠陥があった場合の責任についての情報を記載します。
記載例:
- 返品条件:商品到着後7日以内に限り、未使用の商品に限り返品を受け付けます。返送料は購入者負担となります。
- 瑕疵担保責任:商品に不備があった場合、到着後30日以内は無償で交換または修理を行います。
特定商取引法に基づく表記を怠った場合は、行政処分の対象となります。業務指示に従わなかった場合には、業務改善命令や、最悪の場合、業務停止命令を受ける可能性もあり、さらには「3年以下の懲役または300万円以下の罰金」という刑罰も規定されています。
返品に関するルール
特定商取引法上、消費者には「商品の引渡し等を行った日から8日間が経過するまで、理由なく一方的に契約を解除できる」という法定返品権が与えられています。
ネットショップ側で「返品に関する特約」を設けることは可能ですが、返品特約を設けるには、返品の可否・返品の条件・返品に係る送料負担に関して明確に表示しなくてはなりません。
「クーリングオフ(無条件解約)はできるのか?」という疑問が出てくるかもしれませんが、結論を言えば、できません。ネットショップ(通信販売)は、クーリングオフの対象外なのです。
※クーリングオフとは、特定の販売方法において、一定の期間内であれば契約を無条件で解除できる制度です。この制度は、訪問販売や電話勧誘販売など、消費者が冷静な判断をすることが難しい状況での契約に適用されます。クーリングオフ期間中であれば、消費者は特に理由を述べることなく契約を解除することが可能です。
広告メール等のルール
特定商取引法では、あらかじめ請求や承諾を得ていない者に対する電子メール広告の提供を原則として禁止しています。これは、いわゆる「オプトイン規制」と呼ばれ、広告メールを送るには、消費者が「送信して欲しい」「送信してもよい」という請求や承諾を事前に行う必要があるのです。
ただし、以下のようなケースでは適用除外となります。
- 契約の内容やその履行に関連する重要な事項を通知するメールに広告が含まれている場合
- 消費者が情報提供を求めて承諾したメールの一部として広告が含まれる場合
- フリーメールサービスなどを無料で利用できる条件として提供される広告メール
また、電子メール広告を送信する事業者には、消費者からの請求や承諾の記録を作成し、保存する義務があります。
景品表示法について
景品表示法は、消費者が不当な表示や過剰な景品提供によって誤った判断を下し、その結果、消費者の利益が損なわれることを防ぐために制定された法律です。不当な表示によって消費者を誤認させる行為は、消費者からのクレーム、訴訟リスクの増加など、さまざまなトラブルが発生する可能性があります。
景品表示法では、特に重要視される二つの不当表示があります。
- 優良誤認表示:商品やサービスの品質や性能などが実際よりも優れているかのように誤認させる表示
- 有利誤認表示:商品やサービスの価格や取引条件が競合他社よりも有利であるかのように誤認させる表示
景品表示法に違反した場合、事業者は行政処分や刑事処分の対象となる可能性がありますので注意してください。
違法な表示の例
どのような表示が違法となるのかについて、いくつかの例を紹介します。
- カシミヤ混用率が80%のセーターを「カシミヤ100%」と表示する: 実際の内容よりも著しく優良であると誤認させる表示。(優良誤認表示)
- 「この技術は日本で当社だけ」と表示しながら、実際には競争業者も同じ技術を使用している場合:他社の商品やサービスよりも著しく優良であるかのように誤認させる表示。(有利誤認表示)
- 「100人限定で特別割引価格で提供します」と表示しながら、実際には応募者全員を当選させて同じ条件で契約させる場合:取引条件について実際のものよりも有利であると誤認させる行為。(有利誤認表示)
- 「他社商品の2倍の内容量です」と表示しながら、実際には他社商品と同程度の内容量である場合:競争業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると誤認される表示。(有利誤認表示)
- オーストラリア産の牛肉を「国産和牛」と表示して販売する:実際よりも度を超えて優良であるかのように見せかける表示。(優良誤認表示)
ステマへの規制
ステマは、広告であることを隠して商品やサービスを宣伝する行為で、消費者が宣伝内容を客観的な情報や個人の意見と誤認することが問題視されるようになり、規制の対象となりました。
規制の対象となるのは、インフルエンサーや第三者が商品やサービスを宣伝する際に、広告であることを明示せずに感想やレビューを装って行う行為です。個人の感想等の広告でないものや、テレビCM等の広告であることが分かるものは対象外です。
また、規制の対象者となるのは、商品やサービスを提供する事業者のみです。宣伝の依頼を受けたインフルエンサーなどの第三者自体は規制の対象外で、その指示を行った事業者が違反をしたという扱いになります。
ステマ規制に反した場合、事業者名が公表されるなど消費者庁から措置命令を受ける可能性があります。そのうえさらに措置命令に従わないとき、刑事罰の対象となり2年以下の懲役または300万円以下の罰金などの罰則が科されることもあります。
電子契約法について
電子契約法(電子消費者契約に関する民法の特例に関する法律)は、ネットショップやその他の電子商取引において、消費者の操作ミスや意図しない購入を救済するために定められた法律です。
本来、消費者が契約するつもりがなかったのに契約をしてしまった場合、民法に基づく無効を主張することができますが、消費者側に重大な過失があるとその主張はできません。
しかしながら、電子契約法では、ネットショップ上の誤操作であれば無効の主張ができるとしているのです。
そこで事業者としては安易な契約取消を防ぐため、申込みボタンを押した後に確認画面などを表示させるなどの処置が必要です。
わかりやすく表示させることで、消費者が取消をできるケースを「重大な過失」がなかった場合のみに限定するのです。少なくともワンクリックで申込みが完了するような仕組みは避けるべきでしょう。
個人情報保護法について
個人情報保護法では、個人情報を取得する際に目的を明確にすること、その目的の範囲内でのみ利用すること、また、取得した個人情報は適切に管理し、不正アクセスや漏洩、紛失、破壊から保護することを求めています。
ネットショップの運営においては、セキュアな決済システムを使うこと、アクセス権限の適切な管理、プライバシーポリシーの策定と明示に留意しましょう。
また、ネットショップでは、ユーザーがウェブサイトを訪れた際に、Cookieを使用してユーザーの行動履歴を追跡することがあります。このCookieについても取り扱いに注意が必要です。
2022年4月に施行された改正個人情報保護法では、「個人関連情報」という新しい概念が導入されています。これには「CookieやIPアドレスなど、直接的には個人情報には当たらないが、個人を特定できる可能性のある情報」が含まれています。
この個人関連情報を第三者と共有するときはユーザーから事前の同意を得ることが義務とされています。
また欧州で施行された厳格な規制であるGDPRにおいても、個人データ(Cookieを含む)の取り扱いに関するルールを定めています。
GDPRでは、Cookieを個人データとみなしており、Cookieを使用する際には、ユーザーから明確な同意を得る必要があります。
そこでCookieの取得許可に関してバナーで表示し、承諾の意思表示をユーザーができるようにしておきましょう。Cookie全体への一括同意・Cookieの種類に応じた個別同意、そして不同意、のいずれかから選択できるようにしておくと良いです。
法令遵守を徹底してネットショップを運営しよう
ネットショップの運営にも様々な法令が絡みます。消費者からの信頼を得るためにも法令遵守の徹底を心がけましょう。
このことは罰則を受けないためにも重要なことですが、安心して商品が購入できる環境を作ることが、ネットショップの長期的な成功のためにもなるのです。